大腸がんは、一般に広く知られた病気です。

近年では、大腸がんと診断を受けた人は20年で2倍に増えています。

将来的には、一番多いがんになるとされています。

女性では一番多いがんであり、男性では三番目に多いがんです。

他のがんと比べると死亡率は高くないのですが、注意する必要があります。

大腸がんは、他のがんと比べて、成長もゆるやかで治りやすいと言われていますが、実際に早期に発見し治療できれば完治することがほとんどです。

進行がんにいたっても、リンパ節転移がみられる状態でも5年で、生存率が7割ほどあります。

この記事では大腸がんの検査。

また、治療や手術後についてお伝えしていきたいと思います。

 

大腸とは

 

胃でやわらかくなって流れてきた食べたものを消化吸収するのが、小腸の役目です。

そして流れてきた食べ物から水分を吸収し、残りをためておくことで食物繊維の発酵をうながし、便として固めることが大腸の役目です。

発酵は腸内細菌によっておこなわれます。

善玉菌と悪玉菌があり、悪玉菌は硫化水素やアンモニアといった有害物質をつくることがわかっています。

ですがこのような腸内細菌による作用は、実際にどのような病気に影響しているのかはよくわかっていません。

大腸は、右の骨盤の上あたりの背中側の盲腸部で小腸とつながっています。

そして背中側を上の方に伸び(上行結腸)、肝臓の下あたりで体の前側に曲がり、左に伸びていきます(横行結腸)、そしてまた背中側に曲がり、下に伸びていきます(下行結腸)、S状結腸とよばれる形の自由度が高い結腸へて、背中側の直腸に入り肛門が出口となります。

構造は、胃と同じで、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)の順です。

 

大腸がんの説明

 

大腸がんは正常粘膜に腺腫が発生し、がんに移行するものが主だとされていますが、正常粘膜から直接発生する場合もあると考えられています。

腺腫からがんになる場合は、大腸ポリープから移行するものが多いです。

大腸ポリープとは、大腸の粘膜から発生し、イボやキノコのように腸管の内側に向かって成長していく病変のことです。

これは珍しくない病変で、ほとんどは非腫瘍性でがん化しないのですが、一部に腫瘍性の腺腫のものがあり、がん化する可能性があります。

また正常粘膜から直接発生するものは、進行も早く危険であるとされています。

 

大腸がんの原因は

 

大腸がんの危険因子としては、

 

・食生活

・炎症性腸疾患

・遺伝による体質

 

が考えられています。

食生活は、高脂肪、高タンパク、かつ食物繊維が少ない、このような欧米型とも言われる食事が原因とされています。

日本での大腸がん増加はこのような食生活の変化にあるとされています。

炎症性腸疾患にはいくつかあり、原因はストレスや体質であったり遺伝的な可能性もありますが、慢性化している場合は大腸がんのリスクが高くなります。

それが特に潰瘍性大腸炎の場合は危険性が高くなります。

遺伝的な体質としてはあまり見られませんが、家族性大腸腺腫症(FAP)やリンチ症候群があり、慢性化していき大腸がんを発病します。

これらは他の大腸がんと違い、若くして発病する特徴があります。

家族性大腸腺腫は、消化管ポリポーシスとよばれ、主に大腸ですが消化管にポリープが明らかに多発します(100個など)。

そして家族に同様の患者がいる場合(家族性)に疑われます。

放置すれば中年期には確実に大腸がんを発症しますが、遺伝子検査で確実に診断することができます。

リンチ症候群という遺伝要因の症候群があります。

親、子、兄弟に一人の大腸がん患者がおり、含めて家系内に三人以上の大腸がん患者がいる、などの基準で疑われます。

そしてマイクロサテライト不安定性検査という血液検査で陽性の場合、遺伝子検査をおこなうことで診断がつきます。

リンチ症候群の場合、大腸がんや子宮体がんを発病する可能性があるとわかっていますので、定期的に検査することで早期発見と治療が可能です。

 

大腸がんの分類は

 

基本的な分類は、胃がんなどと同様に、粘膜下層にとどまっていれば早期大腸がん、粘膜下層を超えていれば進行大腸がんです。

治療に必要な病期の分類も胃がんと同様に、大腸がんの深さ、リンパ節転移のようす、転移の有無、で判定されます。

 

・ステージ0は大腸がんが粘膜の中にとどまっている状態です、

・ステージ1は深さが粘膜下層にとどまるもの、

・ステージ2は粘膜下層を超えているがリンパ節転移はないとされるもの、

・ステージ3はリンパ節に転移がみられるもの、

・ステージ4は他臓器に転移しているものです。

 

がんには、細胞が成長した分化がん、細胞が未熟なまま増えていく未分化がんや低分化がんがあり、がん細胞を病理検査することでわかります。

大腸がんには、成長の遅い分化がんが多く、比較的おとなしいがんなのはこのためです。

進行大腸がんになると、転移の可能性があります。

血液の流れにのって転移する血行性転移、リンパの流れにのって転移するリンパ行性転移、大腸がんが腸管を突き抜けて広がり、腹膜内に広がるものを腹膜播種(はしゅ)といいます。

血行性転移先として多いのは、肝臓です、次に肺になります。

リンパ行性転移の場合は、全身に可能性があります。

腹膜播種の場合には、すでに相当進行しています。

腹膜内に散らばったがんにより、がん性腹膜炎をおこします。

 

大腸がんの症状

 

初期では、無症状なことがほとんどです。

早期大腸がんは、健康診断での大腸がん検診でおこなわれる便検査(免疫学的便潜血検査)から医療機関を受診し検査を受けて発見されることが多いです。

便に血液が混ざることは胃や十二指腸からの出血でもありえますが、免疫学的便潜血検査は大腸からの出血に反応する検査です。

大腸がんが進行していくと、病変が大きくなり大腸の通りを悪く(通過障害)していき、便やガスたまっていくようになります。

すると、お腹の張り(膨満感)や便秘、便が細くなったり(便柱狭小化)、おならが出なくなる、といった症状があらわれます。

さらに大腸がんから出血すると、赤黒い血便が出ます。

この出血が続くと貧血になり、めまいやフラつきといった症状もあらわれます。

病変部の炎症によって腹痛もあらわれ、大腸の炎症によっては下痢をすることもあります。

腹痛や便秘は、大腸がんに特有ではありませんが、赤黒い血便の場合は、大腸内での出血が考えられます。

大腸がんの可能性がありますので、注意しましょう。

なお、痔の場合は普通の赤い血の色です。

またある程度の高齢の人が貧血の場合にも、大腸がんや胃がんといった消化管からの出血が疑われます。

進行大腸がんの場合、病変の場所によって症状の現れかたに違いがあります。

右側大腸がん(自分の体で右側)の場合は、まだ腸内の便が液状のために通過障害が起こりにくく、症状が現れにくいです。

病変が大きく成長して腹痛を発生させたり、弱い出血が続き貧血をおこしたりといった症状になります。

左側大腸がん(自分の体で左側)の場合は、便が固形化してきていますので、便秘や便中狭小化といった症状が出やすいです。

 

大腸がんの検査

 

大腸がん検診での、便検査で引っかかり受診される人が多いと思われます。

受診された場合には、問診や診察、血液検査がおこなわれます。

問診では、腹部の症状、便の様子、家族の大腸関係の病歴が聞かれます。

診察は、腹部の張りなどがなされます。

CEAやCA19-9のような血液検査は、大腸がん特有の検査ではないために、目安でしかありません。

そして大腸の画像検査がおこなわれます。

現在ではさまざまな種類がありますが、事前に準備が必要になることは共通ですので、次回受診時にされます。

通常でおこなわれる検査としましては、肛門からバリウムを流し、空気を入れふくらませてX線写真を撮影する注腸検査ではないしょうか。

その場合には3日ほどかけて、専用の食事や下剤などを使い、大腸の中に余分なものが残らないようにします。

X線写真は余計なものと病変の区別が難しいためです。

この検査前処置は、食べ物は満足に食べられない、下剤がつらいなど、人によってはかなり負担になるものです。

どうせ同じ検査前処置をするのなら、という訳で注腸検査は飛ばして内視鏡検査をする施設もありますし、希望される人もいます。

内視鏡検査は、その人の大腸の走行や検査する医師の技量に左右され、受ける人に大きな負担がかかる場合があります。

不安な場合は、きちんと相談し、体が楽になる鎮静剤を使うことも考えたほうがいいかもしれません。

その場合は検査後にフラつきや、ぼーっとした感覚がしばらく残る可能性があります。

クルマの運転はしないなど帰りのことを考えておく必要があります。

大腸がんやポリープなどあれば同時に生検がおこなわれ、ポリープであれば切除します。

生検で取った組織で病理検査おこない、進行度や組織型が判断されます。

大腸がんと確定すれば、術前にがんの深さや転移の有無などの検査がおこなわれます。

 

大腸がんの治療

 

大腸がんを切除することが治療の基本です。

ステージ0やステージ1の早期大腸がんでリンパ節転移の可能性がないと思われる状態であれば、内視鏡的におこなうことができます。

その際に切除された病変を病理検査した結果、外科的な手術になることもあります。

手術は、病変の場所でかわってきます。

大腸の病変がある場所に走る血管の、その血管の根本から同じ血管が走る区域を切除します。

これは血行転移やリンパ節転移の可能性を極力おさえるためです。

最近では腹腔鏡とよばれる内視鏡を使った手術もおこなわれることが多くなりました。

おこなう医師の技術や病変の位置によってリスクがありますので、相談の上おこなうべきです。

特に問題になるのは、大腸がんが直腸にある場合です。

その位置によって術式が変わり、人工肛門の有無に関わってきます。

人工肛門は術後の生活に大きく関わるもので、また肛門を温存する術式もありますが難しく再発のリスクも残ります。

病変の位置によってはできない可能性もあります。

現在では昔と違い、直腸がんの8割ほどで肛門を温存する手術が行われています。

担当医とよく相談の上、決めるべきです。

薬物療法は、大腸がんの場合には、手術後の再発や転移を予防する目的、それらを治療する目的でおこなわれます。

現在は分子標的薬といい、がん細胞を狙って治療できる薬の開発がすすんでおり、効果が上がっています。

放射線治療は、大腸がんには腺がんが多く、放射線が効きにくいために主流ではありませんが、病変の位置的に有効な場合や、がんを小さくして手術するといった場合にはおこなわれることがあります。

同時に、精神的や心理的にフォローする緩和ケアがおこなわれます。

緩和というと、いいイメージがないかもしれません。

これは、患者が医療機関や家族と意識を共有して、皆で協力して治療に向かうという重要なケアです。

現在では、がん対策基本法に規定されており早期から取り入れることになっています。

 

大腸がんの手術後は

 

普通の開腹手術の場合は、2週間ほど入院して回復につとめます。

できる範囲内でなるべく早期に、ベッドで寝る状態から離れ(離床)、歩くことがポイントです。

傷が痛むことがありますが、その場合は遠慮せずに伝えて痛みを取るようにすることも回復につながります。

そして食事が取れるようになり、炎症などの発熱がないことが退院の条件です。

退院後は、周りの協力をあおぎ、少しづつ日常生活に戻るようにします。

体力回復に大切なのは、食事になります。

大腸がんの手術後は、腸の動きが一時的に弱くなっています。

食物繊維を取りすぎずに消化吸収のよい食事をすること、規則正しく一度に大量の食事をしないこと、栄養バランスを考えること、便秘をしないように一日2リットルを目安に水分を取ること、が必要です。

大腸がんの術後には、排便の質や間隔に変化があり、下痢や便秘になったり、回数や時間といった部分です。

人それぞれ違ってくるので、うまく付き合っていきましょう。

またつなげた大腸の傷が治る過程で、周囲の組織と癒着したり、大腸そのものが狭くなったり固くなったりします。

便やガスが出にくくなり、悪化すると大腸がつまる(腸閉塞)可能性もあります。

この場合も、注意して生活していくことになります。

また、手術によっては排尿障害や性機能障害がおこる場合もありえます。

 

大腸がんの予防

 

大腸がんのリスクとして確実なものに、赤身肉や加工肉、肥満、飲酒、高身長があります。

また動物性脂肪やさまざまな食品添加物も可能性があるとされています。

一方リスクを下げる要因として、運動、食物繊維を含む食品などがあります。

食物繊維を多く含み、動物性の肉や肉製品をひかえるバランスの良い食生活がいいでしょう。

運動習慣も、腸の動きを活発化させ定期的な排便をうながし、肥満をおさえることもできます。

運動習慣は規則正しい睡眠習慣やストレス解消にもつながり、がん予防の効果が期待できます。

 

おわりに

 

大腸がんは、他のがんよりややおとなしく、治療しやすいがんであることがわかります。

現在では、直腸のがんであっても、昔ほどの確率で人工肛門になることもありません。

ですが大腸がんは、現在進行形で増え続けており、高齢化が進むほどがん発生の確率が高くなることもあり、今後とも気をつけるべきでしょう。