認知症のイメージとして一般的なのは「ぼけ症状」や「もの忘れ」などでしょう。

アルツハイマー型認知症は認知症の中でもっとも多く、一般的に知られている病気です。

国際疾病分類では、「早発性ならびに晩発性のアルツハイマー病の認知症」「非定型あるいは混合型、特定不能のもの」とされています。

 

以前では65歳以上で、歳をとるごと(加齢)にともなう脳の縮み(萎縮)による認知症が進行し、社会生活が難しくなったものを老年痴呆。

特別の原因がなく初老期に発症する認知症を初老期認知症(アルツハイマー病)と呼んでいました。

現在は65歳以前に発症するものを早発性アルツハイマー型認知症。

以降を晩発性アルツハイマー型認知症としています。

 

現在65歳以上の認知症患者数は8%ほどですが、高齢化の進行とともに、少しずつ上昇するとされています。

年齢層では80歳以降になると患者数は急激に増えます。

またアルツハイマー病は女性に多いです。

男性がなりやすい血管性認知症は以前はアルツハイマー型認知症の倍ほどの数だったのですが医学の進歩や健康志向な人が多くなっていることで減り続け、今では逆転されています。

そして認知症患者数も男女比が逆転しており、今では女性が多く諸外国と似た分布になってきました。

この記事ではアルツハイマー型認知症の原因や、初期、中期、末期についてお伝えしていきます。

 

アルツハイマー型認知症の原因

 

アルツハイマー型認知症の直接の原因は、脳の変性と萎縮です。

体質(遺伝的要因)や加齢にともなうさまざまな要因、その他の要因があると考えられています。

遺伝的要因は、双子(一卵性双生児)で二人ともアルツハイマー病を発症する割合が4割を超えることからもわかります。

原因となる遺伝子も判っていますが、遺伝的要因がすべてではありません。

その他の要因としましては、社会的要因、心理的要因も関与しているとされています。

これは社会的な心理的ストレスをきっかけとして発病している方も多いからです。

また、孤独な生活をおくっている老人は認知症の進行が早いですが、生活環境を改善することによって進行を遅らせることができます.

このような例からも要因として重要であることがわかります。

 

アルツハイマー病の特徴

 

脳の委縮

 

アルツハイマー病患者の脳は、肉眼的には全体的にちぢんでいます。

脳の萎縮は脳の前方(前頭葉)で強く、脳の表面のシワ(脳溝)脳内の構造上のすき間(脳室)も大きくなり、脳の重さも正常な老人の脳と比べると、200~300グラム軽くなっています。

最初は記憶をつかさどる海馬という部分が縮んでいきます.

そして脳の他の部分が縮むとともに他の認知症症状があらわれてきます。

脳組織の変化としての神経病理的所見は、アルツハイマー神経原線維変化、老人斑、神経細胞消失がみられます。

この三つがすべて特定の脳部位に集中するのが特徴です。

そしてこれらはさまざまな神経伝達物質の異常をともなっています。

 

異常なタンパク質(蛋白)の沈着

 

アルツハイマー神経原線維変化は、神経線維にタウ蛋白がリン酸化されて沈着し太くなった状態です。他の認知症でもみられます。

老人斑は、神経伝達の末端である神経突起が変性したものです。

その中心にアミロイド蛋白が沈着し、しみ状に広がっています。

これは認知症につきものです。

これらは老年による変化とも考えられ、正常な老人脳にもみられます。

ただし海馬角や海馬回に限るもので、出現数も少ないです。

神経細胞の末端で情報のやり取りに関わる神経伝達物質や関連酵素の変化も研究されています。

特にアセチルコリン作動性ニューロンの脱落が注目されており、原因の一つとされています。

 

アルツハイマー型認知症の症状と経過

 

アルツハイマー型認知症の前ぶれとして、軽い物忘れや不安などがあらわれる場合があります。

軽度認知障害(MCI)と呼ばれ、近年注目されています。

これは老化による正常な物忘れと、初期の認知症との境界にあるグレーゾーンです。

この状態では日常生活に支障はありませんが、約5年で半数以上が認知症に以降するとされています。

アルツハイマー病は、認知症の発症以前から脳の変化が始まっています。

この状態から適切な予防治療を受けた場合は、最大で4割ほどの確率で回復すると言われています。

診断基準にそった症状があらわれてからの経過は次のような重症度で判定されます。

 

Ⅰ期(初期、1~3年)

 

晩発性アルツハイマー病であれば発症は通常はゆっくり(緩徐)です。

物忘れが目立ち始め、同じことを何度も話したり聞いたりします.

短期記憶に難がある状態です。

そして仕事上や生活上の大切な約束を忘れたりします。

判断力の低下もはじまり、少し複雑な事は理解できなくなったり間違えたりします。

家族は気がつくことが多いですが、本人は物忘れについて深刻に心配することはありません。

これが特徴的です。

さらに全体的に自発性が低下し、活動の範囲が狭くなります。

性格や人格の変化としては、他人に対する細かい配慮や気づかいが無くなります。

また人格水準が低下し、きちょうめん、がんこ、きれい好き、せっかちといった、それまでの性格的特徴がきわ立ってくる場合もあります。

このように物忘れ、認識力の低下(失見当)、がありますが社会的な機能はまだ保たれている状態です。

脳の変化は記憶をつかさどる海馬の萎縮が主です。

 

Ⅱ期(中期、2~10年)

 

記憶障害が次第に進行していきます。

単なる記憶にとどまらず、行動に影響してくるのもこの頃です。

認知症に由来するさまざまな妄想が特徴的です。

・物をしまった場所を忘れて盗られたと騒ぐ(物盗られ妄想)。

・食事したのを忘れて家族が食べさせてくれないと言う.

・前回に買ったこと忘れて同じものを買う。

このような症状です。

また蛇口やガス栓の閉め忘れ、ストーブやコンロの切り忘れといった重大な問題になりかねない場合もあります。

記憶障害は最近の記憶の障害が起こるが古い記憶はかなり後まで保たれる(リボの法則)現在の日時は判らないが生年月日は覚えている等、診断にも関わります。

これが進行すると、時間や場所や年齢(時間見当識障害)、人の名前や顔(人物見当識障害)といった見当識障害(本来なら判るべきことが判らない)状態が進みます。

失われた記憶を埋めようと作り話(当惑作話)をすることもあります。

また思考にも障害があらわれてきます。

 

・理解力の低下

・注意力がなくなる

・話が回りくどくなり同じ話しを繰り返す

・計算もできなくなる
などの障害が現れます。

 

性格的には一つのことに固執するようになり、関心は自分の体や家族のことなど、狭い範囲に限られてきます。

この頃から海馬の部分だけではなく脳全体の萎縮からくる機能障害として

 

・失語

・失行

・失認(巣症状)

 

も現れてきます。

失語は健忘失語が主で、健忘失語とは、人名や地名といった固有名詞だけではなく、普通名詞も出てこなくなり、あれ、それなどの代名詞でその場をしのぎます。

進行すると言語そのものが使えなくなり、理解も発語もできなくなります。

失行はまず着衣が目立ちます。服を裏返しに着たり、上に下着を着たりボタンがかけられなくなったりします。

失認は誰だか認識できなくなります。

例えば介護してくれる自分の家族がわからなくなったりです。

また鏡に写った自分が認知できず話しかけたりする(鏡像現象)。

これらの巣症状は早発性アルツハイマー病では早期から現れますが、晩発性アルツハイマー病では進行が遅くあまり目立ちません。

むしろ他の全般的な機能障害が目立ってきます。

感情障害は感情が弱く反応が薄い(感情鈍麻)が目立ってきます。

また本来もっていた性格が極端にあらわれることがあり

 

・がんこ

・自己中心的

・攻撃的

・心気的

 

このような状態に介護者が苦労する場合も多くなります。

行動障害は、一貫性や、まとまりがなくなってきます。

例えば目的もなく外出し帰れなくなる、平気で他人のものを持ってくる、つまらないものを集めてしまう、などです。

老年の認知症患者に特有なのが夜間不穏(日没症候群)があります。

昼はウトウトしていますが、夜になると眠らずに興奮気味になり落ち着きがなくなり、症状が悪化したり暴れたりします。

これも介護者を悩ませることが多いです。

脳の変化は海馬の萎縮に加えて側頭前頭葉萎縮がみられます。

 

Ⅲ期(末期、8~12年)

 

認知症が進行して末期になると、日常生活上の行動は排泄も含めて全面介助を要することになります。

知的機能もほとんど失われ、無感情、無関心になります。

神経症状も進行し運動障害も強く、手足の協調も失われて歩行不能になり、けいれん発作、姿勢の異常もあらわれます。

最後は寝たきりの状態からの栄養障害や感染症などの他の病気により亡くなることになります。


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アルツハイマー病の検査は

 

現在ではMCIスクリーニング検査という、軽度認知障害の時点でおこなうアルツハイマー病の血液検査があります。

単なるお年寄りの物忘れなのか、アルツハイマー病の前ぶれなのかを、簡単に判断することが可能です。

まだ保険適用外なので、2万円ほどの実費ですが、アルツハイマー病は早く治療を始めることができれば回復する可能性が高く、そのメリットを考えれば受ける価値はあるのではないでしょうか。

専門医による本人に対する問診、患者家族や周りの方の証言、各種のアンケートのような認知症検査が行われます。

脳そのものの病気による認知症の可能性もありますので、脳の画像検査も行われます。

それらを総合的に判断して診断がなされます。

SPECTやPETといった脳の機能画像検査も有効ですが、施設が限られています。

また髄液検査でほぼ正確に診断できます。

しかし髄液検査は背骨に針を刺し採取するもので、リスクをともなうものであり、アルツハイマー病との確定診断が出ても症状を回復させる治療ができないことからも、おこなわれないのが普通です。

 

アルツハイマー病の治療は

 

薬物治療が行われます。

アルツハイマー病には根本的な治療法はなく、症状の進行を遅らせるためのものです。

軽度認知障害の時点で治療が行われれば、回復の可能性も高く、また認知症の早期に開始されれば、進行を大きく遅らせることが可能です。

アルツハイマー病では神経伝達物資であるアセチルコリン系の機能が低下していることが多く、アセチルコリン系を活発にさせる薬(塩酸ドネペジル)が投与されます。

他の神経伝達系に作用する薬も試用されています。

脳の萎縮等でおこる脳機能に由来する症状に対しては、脳のはたらきを活発にさせる薬(脳代謝改善薬など)が処方されます。

これは主症状である認知機能の改善にはあまり効果はありません。

老人の認知症で問題になる夜間のせん妄状態に対しては、睡眠薬や安定剤より少量の抗精神病薬が有効です。

またうつ症状に対しては抗うつ剤を投与されます。

いずれにせよ、お年寄りは薬の効果があらわれやすい(耐性が低い)ために、一般的な量を投与すると効きすぎてしまい、活動性が低下しすぎて逆に失禁や歩行障害などがあらわれることがあり、注意して少量ずつ処方することになります。

よって、介護には十分な力を尽くすべきです。

 

アルツハイマー型認知症への介護や対応は

 

老年期の認知症患者は、他の身体的病気にかかることも多く、日常生活のレベルは人それぞれです。

その人の水準にあわせ日中の活動レベルをできるだけ上げるように指導するのが大切です。

運動障害のある方でも、可能な限り日中は立たせたり座らせたり、可能であれば歩行させます。

また日光など光による刺激も生活リズムの維持に有効です。

このように規則的な生活習慣をおくり、日中はなるべく覚醒しているように働きかけます。

精神や肉体的活動水準を上げることは認知症の進行を遅らせることに有効で、なお、夜間の睡眠をうながし、夜間せん妄の改善にもつながります。

介護や接し方も治療と同じように大切です。

患者が自分でできることはなるべく本人にさせるようにうながし、介護者は支えるようにつとめます。

ただし能力以上のことを要求してはいけません。

本人のペースにあわせた対応をします。

認知症患者は、認知機能は低下しても感情的な機能は比較的保たれていることが多く、その人にストレスをかけることは症状の進行を早める可能性があります。

怒ったり叱ったりしないようにして、患者が生活しやすい環境を目指します。

カレンダーや目印などを活用し、日常生活を患者が自力でできるように工夫しましょう。

また、介護をするうえで認知症の知識や理解を深めることをテーマとした、すばらしい記事がありますのでご紹介させていただきます。

 

きらケア

きらッコノート

認知症への理解を深め、明日への介護につなげたい方にオススメの記事特集☆

この記事では、認知症の理解を深められる様々な記事を紹介しています。

介護をされている方の参考にしていただければと思います。

 

介護は、認知症患者の狭くなった領域内である家庭でおこなうのがベストですが、いろいろと難しいことも多いです。

必要に応じて介護保険を使いヘルパーを利用したり、昼間だけ施設に通所させ、デイケアをおこないます。

デイケアは日中の活動を維持させ、他人や社会とのかかわりを保たせるためにも有効です。

認知症症状や身体的症状が介護能力をこえる時は、無理をせず各種の施設でおこなうべきです。

 

おわりに(予防について)

 

早期発見からの早期治療がされれば、症状の進行を大きく遅らせることが可能です。

今ではMCIスクリーニング検査があり、簡単な血液検査で早期発見できます。

少しでも気になれば受けることを考えるべきでしょう。

また患者本人は初期症状を気にしないケースが多いので、家族や周りの方が受診をすすめるように心がけてください。

例えば、定年退職後や家族を亡くし一人暮らし、このような生活環境が一変し精神的支えがなくなったなどの、大きなきっかけで発症する場合もあります。

生活習慣の維持や社会や他人とのかかわりを絶たないことも予防になるでしょう。

心も体も健康的な生活を目指してください。