骨粗しょう症という病気は、テレビ番組やCMでよく目にする機会があります。

一言で言えば、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。

お年寄り、それも女性に多いことは昔から知られています。

この病気は仕方がない部分もありますが、お年寄りが寝たきりになる原因として転倒や骨折が多いことを考えれば、予防や早期発見での治療が重要です。

骨粗しょう症について理解を深め、予防することは、日常生活活動度(ADL)や生活の質(QOL)を保ち、老後の生活にとってプラスになるでしょう。

 

骨のしくみ

 

骨は成長したら、一生のあいだ変化しない、と思われることが多いでしょう。

骨は実際には、体の他の部分と同じように、古い組織を新しい組織に入れ替える新陳代謝を繰り返しています。

これが、骨代謝とよばれるしくみです。

 

骨には「皮質骨」と「海綿骨」があります。

皮質骨は骨の外側の固い部分です。

海綿骨は皮質骨の内側で、隙間なく張り巡らされている細い骨です。

これを骨梁とよびます。

例えると、家の骨組みになる柱(骨梁)が大量にある様子です。

皮質骨でできた外側を支えるだけではなく、骨の軽量化や、そのスポンジ状の構造で骨に加わった力を分散させたり、造血機能をもつ骨髄を保持したり、多くの重要な役割があります。

この皮質骨と海綿骨の割合は骨によって違い、腕や脚にある長い骨(長管骨)は皮質骨が多く、丈夫に作られています。

 

一方、背骨(椎体骨)は海綿骨の割合が多いです。

骨代謝では、古い骨を壊すことが常に先です。

骨髄で作られた破骨細胞が、古い骨を壊します。

その結果、血液中にカルシウムが流れ出します。

そのあと、骨芽細胞とよばれる別な細胞が、カルシウムやコラーゲンとなどの物質と結合しながら骨として成長していきます。

この骨代謝サイクルは、リモデリングと言われ、古い骨の破壊と新しい骨としての再生。

このバランスが取れているのが健康な状態です。

骨の新陳代謝をすることで骨格の強さを維持するだけでなく、血液中のカルシウム濃度の調整もしています。

骨代謝でリモデリングされる一年間での割合は、皮質骨が3パーセントと少ないのに対して海綿骨が30パーセントとされています。

 

骨粗しょう症とは

 

骨代謝をつかさどる破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスが崩れた時におこります。

破骨細胞が優勢になった場合、骨の減少のほうが早くなり再生が追いつきません。

これが骨粗しょう症の始まりです。

最初に減少があらわれるのは、骨代謝の大きい海綿骨です。

骨梁がどんどん減っていくと、海綿骨のきめが粗くなり、結果として骨そのものがもろくなります。

海綿骨の割合が最も多い背骨の骨(椎体骨)に対する影響が最も大きく、次いで太ももの付け根の部分(大腿骨近位端)や腕と肩の付け根(上腕骨近位端)といった部分がもろくなり、骨折する可能性が高くなります。

バランスがくずれる原因としては、ビタミンDの不足、エストロゲンの減少、があります。

 

ビタミンD

ビタミンDは、日光浴すれば体内でコレステロールから作ることができます。

しかしそれでは足りないので、食事できちんと取る必要があります。

ビタミンDは、血液中のカルシウムの量を増やす働きがあります。

具体的には、腸からのカルシウム吸収をうながす、尿として体外に排出されるカルシウム量を減らす、骨からの血中に溶けるカルシウムを増やす作用があります。

よって、ビタミンDが減少すると、カルシウム欠乏症になり骨が弱くなります。

ビタミンD欠乏による骨の病気は、年齢には関係なく発生します。

骨軟化症とよばれ、子供の場合はくる病とよばれます。

 

エストロゲン

エストロゲンは、女性ホルモンの一つです。

女性が閉経すると骨がもろくなりやすいことは以前から知られています。

エストロゲンは破骨細胞に作用し古い骨を壊すのを防ぐ役割があります。

女性が更年期以降に閉経し女性ホルモンの放出が急に減ったために、バランスがくずれ、骨が減り続けもろくなっていきます。

またエストロゲンが減ると、腎臓でのビタミンDのはたらきが弱くなり、血中カルシウム濃度が下がります。

すると副甲状腺ホルモンのはたらきが強くなり、骨からのカルシウム放出が増えます。

こうしてどんどん骨がもろくなっていきます。

 

この女性ホルモンは、男性にもあります。

しかしかなりの高齢になるまで量が減らないのが普通です。

男性には骨粗しょう症が少ない理由です。

男性の場合は、70歳前後から患者が増えてきます。

このように、加齢や閉経といった原因でおこる骨粗しょう症そのものが病気の場合を、原発性骨粗しょう症とよびます。

他にも、他の病気や薬が原因でおこる可能性があります。

これらは、続発性骨粗しょう症とよばれます。

原因となりやすい病気としては、糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病や、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、関節リウマチ、胃の切除後、などがあります。

また、ステロイド薬を長期服用していた場合も副作用としてなる場合があります。

 

骨粗しょう症の症状は

 

お年寄りの場合は、背が低くなった、腰が曲がってきた、伸びなくなった、腰痛がとれない、といった症状から受診されることが多いと思われます。

骨の強度がおちたことが原因の骨折を、脆弱性骨折といいます。

普通であれば、骨折などするはずがないような衝撃で骨折することです。

ひどい場合では、せきやくしゃみ、階段を降りた拍子に、というケースもあります。

背中が痛くて動けず一か月ほど家で寝込んだというような場合では、いつのまにか背骨が骨折していた可能性があります。

最近言われている、いつのまにか骨折です。

 

また背骨の椎体骨は、このような脆弱性骨折をすることが多いです。

治っても椎体骨が上下から押しつぶされ、大きさが小さくなり、前方に狭いくさび方に変形することが多く、圧迫骨折とよばれます。

もっと怖いことには、一個骨折すると(胸椎は12個、腰椎は5個)他の椎体骨が同じように骨折する可能性が高くなることです。
これが、ドミノ骨折とよばれ、最も注意しなければなりません。

その結果として、背中が丸くなり伸びなくなる円背といった状態や、身長が縮んだり慢性的な腰痛に悩まされたりします。

また腕の付け根を骨折した場合は、腕が不自由になる可能性があり、太ももの付け根を骨折した場合は寝たきりになる可能性もあります。

 

骨粗しょう症の検査は

 

現在は、FRAX(R)という評価法がWHOで提唱されています。

これに問診で得られた情報から、当てはまる要因を当てはめていくと、骨粗しょう症になるリスクを含めおおよその目安がわかります。

年齢、性別、体重身長、両親の大腿骨近位端骨折歴、現在の喫煙、ステロイド薬の使用、間接リウマチ、続発性骨粗しょう症の有無、アルコール摂取量、大腿骨近位端骨密度、が因子です。

 

直接おこなう骨の検査はさまざまなレントゲン装置での検査法がありますが、簡単で幅広く使われているものは超音波での検査装置だとおもわれます。

かかとの骨を超音波で検査し、年齢分布に当てはめる検査です。

同時に血液検査や尿検査もおこなわれます。

種類が豊富でさまざまな要因が判別できます。

実際には、骨折の有無、骨折歴、骨密度、検査結果で総合的に判断されるでしょう。

また、骨粗しょう症の治療や経過観察には、骨代謝マーカーとよばれる血液検査がおこなわれます。

 

骨粗しょう症の治療と薬剤

 

現在は薬の進歩はめざましく、さまざまな薬剤があります。

骨粗しょう症の治療方針は、

 

・年齢や現在の状況

・骨折の有無

・骨代謝マーカーの結果

 

このようなもので判断されます。

骨代謝マーカーの結果で破骨細胞の活動が盛んな場合には、骨破壊を遅らせる薬が投与されます。

また骨密度も骨代謝もそれほど悪くない場合には、カルシウム吸収をうながす方向での治療がおこなわれます。

骨折リスクの少ない50代60代の方には、強力な薬は出されずに食事や運動での改善が求められるでしょう。

 

腸からのカルシウム吸収を増やす薬として、カルシウム製剤、活性型ビタミンD3製剤があります。

近年ビタミンD3製剤はカルシウム吸収だけではなく骨破壊を抑制する効果があることもわかっており、効果も強く副作用も弱いものです。

骨形成を助ける薬は、ビタミンK2製剤と副甲状腺ホルモン剤(PTH)があります。

ビタミンK2は、納豆から研究開発された薬です。

効果は薄いとされていますが、ビタミンK2不足は高齢者の骨折リスクを高めることがわかっていますので無視できません。

また血液を固める作用がありますので、心筋梗塞や脳梗塞などの病気で血液を固まりにくくする薬を使っている場合は使えません。

 

副甲状腺ホルモンは、本来骨破壊をうながし血液中のカルシウム濃度を調節するホルモンです。

ですが、これを断続的に大量投与すると逆に骨形成が促進されることがわかりました。

注意点としては、きちんと投与する必要があるのと価格が高めなことでしょう。

骨破壊をおさえて骨量を増やす薬として、ビスホスネート製剤(BP)があります。

骨を包んで破骨細胞の働きから守る、というイメージです。

骨量増加が大きい薬ですが、年に3~4%です。

腸内での吸収効率が悪いために服用条件が厳しい薬で、朝食前、大量の水で飲む、服用30分は水以外を飲むことの禁止、横になってはいけない、などのルールがあります。

 

最近では注射薬や飲む回数が少ないタイプも開発されています。

他にエストロゲン製剤といった女性ホルモン剤もありますが、副作用を考えると難しいでしょうか。

今注目されている新薬は、人型モノクローナル抗体製剤です。

分子標的治療薬の一つで元々は癌の骨転移の治療薬でした。

これが骨破壊を抑え骨粗しょう症に効果が高いことがわかり、使われるようになりました。

半年に一回の注射で済む簡単さもあります。

 

骨粗しょう症の予防や対策は

 

骨粗しょう症の予防は、骨を健康で強くたもつことです。

日光浴、食事、運動の三つが有効で、きちんと若い頃から習慣としておこなうべきです。

若い頃から骨量を増やしておくことで、特に女性にとっては避けられない骨量の減少にそなえることができます。

また骨量を、定期的に測定することも大切です。

自治体や職場で違いがありますが、多くは女性で40歳以降は5年に一度は骨密度の健康診断があるのではないでしょうか。

定期健康診断で検査できる場合は行うべきでしょう。

検査結果は年齢分布になっており、骨粗しょう症のリスクがわかります。

60代前後から骨量の減少が大きい人は椎体骨骨折の可能性が出てきます。

50代のうちから予防や治療でそなえるのがいいでしょう。

 

食事での予防や対策について

食事療法は、カルシウムの多いものだけではありません。

カロリーや塩分量に注意し、他の生活習慣病の原因にしないようにします。

タンパク質もきちんと摂取します。

筋肉が体を支え、骨折リスクを減らします。

ビタミンDはもちろんですが、骨の維持にはビタミンK、ビタミンB群、ビタミンC、も必要です。

 

また嗜好品もよくないとされています。

酒や、コーヒーのようなカフェイン飲料も多く取らないほうがいいでしょう。

また、若い頃の無理なダイエットも悪影響があることがわかっていますので注意してください。

牛乳はいろいろ言われていますが、カルシウム吸収効率が高くさまざまな栄養もあるために有効です。

ただし日本人には体質的に合わない方も多いのが実情です。

乳製品でもかまわないので試してみましょう。

 

またサプリメントでも補給できますが、カルシウムが多すぎると違う病気の原因になることもありますので注意してください。

骨粗しょう症による骨折を防ぐには、骨量を増やすよりも、筋力を増やすほうが効果的とされています。

筋力を増やすことで体を支え、転倒や転落を防ぐのはもちろんですが、運動習慣が骨量減少を減らすことがわかっています。

この運動は、ジョギングや散歩といった実際に体重で骨格に負担をかけるものが良く、水泳のように浮力で体に体重の負担がかからないようなものは効果が薄いこともわかっています。

これは続けることに意味がありますので、自分のできる範囲内で自分のペースでおこなってください。

 

おわりに

 

以前は、糖尿病のような生活習慣病のように、完治することなく一生付き合っていく病気とされていました。

現在では、薬の進歩もあり、早期発見し治療や予防を開始すれば大きく改善がみこめる病気になりました。

検査も一度行えば将来的におおよその傾向がわかるものです。

特に女性の方は年齢がさしかかったら一度受けておくべきでしょう。

なにより運動や食事といった生活習慣を健康的なものにすることが予防になります。

意識してみてはどうでしょうか。